2009年12月20日

終わったから言える「夜会 Vol.16」

先日の金曜日で今年の「夜会 vol.16 〜夜物語〜 本家・今晩屋」の全公演が終了しました。

今回の公演も幸いにして2回観に行くことができました。

そこで,夜会の終わった今だからこそ,感想を書いてみようかと思います。



今回の夜会はタイトルからして前回「vol.15」の再演であることは分かりました。

前回の夜会は内容の「理解しづらさ」では屈指の夜会だったように思います。パッと見ではなんのことか分からず,意味を考えてるうちに終わってしまい楽しめなかった,なんて声も聞かれました。
確かにパンフレットにも前書きやあらすじは書いておらず,「安寿と厨子王のその後の物語」とだけ。森鴎外の「山椒大夫」自体を読んでいる人も少ないであろう昨今,さらにその後の物語と言われてもわかりにくさが先行してしまったのも仕方ないかもしれません。

そこで今回の「夜会」ではどのように変えてきたのかが興味津々でした。

結果として,「24時着0時発」と「24時着00時発」との差とほぼ同じ,いやそれよりも差
異は少なかったのではないでしょうか。
細かな演出の違いはあるんですが,ストーリーそして曲目は全くといっていいほど一緒です。

第1幕の「難解さと間延びした感じ」もそのままだし,第2幕の「前半とは打って変わってのすばらしい盛り上がりもそのまま。

今回の公演では前半の理解しにくさを少しでも分かりやすくいじってくるかな,と言う期待が僕にもありました。しかし,(裏話は知りませんが,)たとえ何らかの要請があって今回の夜会が急遽開演決定したとすれば,開演までの打ち合わせに始まりリハーサルまで考えると,脚本を細かく修正していくのは時間的には無理な話でしょう。

その部分を更に洗練できれば,さらにいいものが出来るんじゃないか,と正直に思います。

その一方,同じ内容を何度も見たおかげで,だんだんと彼女の言いたい(であろう)ことが分かってきたことも事実でして…このかみ砕く経過って言うのもなかなか味わい深いんですよね。


中島みゆき扮する「暦売り」は言わば「狂言回し」役。
転生した安寿そして厨子王,転生して忘れてしまった「約束」,しかし忘れられぬ「罪の意識」を背負って生きてゆく。

前半では縁切り寺の尼寺での出来事。ある者は炎の中へ進み,またある者は水の中へ身を投じることで,現世を断ち切り,来世へと旅立とうとする。しかし『百九番目の除夜の鐘』が鳴り止まず,「涙の輪廻」を繰り返しまごついてしまう。
後半ではさらに時代が下がり水族館が舞台になるも,前世と同じように「涙の輪廻」を繰り返し迷っている彼ら。そのうちに彼らの「罪の意識」が何であるか,徐々に思い出してゆく。

そして彼らの母も,子供をいとも簡単にさらわれてしまったことを悔やみ,そして自分を責めながら,後悔を繰り返してゆく。

そんな「守るに守れぬ約束」や「後悔」により断ち切れなかった「涙の輪廻」も『赦され河を渡る』でようやく断ち切られ,彼らは救われてゆく。


そんな感じではなかったか,と個人的に思います。


また,「S席2万円,A席1万8000円」という価格も話題になったようです。

たしかに歌舞伎公演などに比べても高い部類ですし,この景気動向ではなかなかポンと出せる金額ではありませんよね。先般の記事に書いたとおり,チケットの売れ行きが今年は鈍かったのも確かです。

ただ,音楽を含めた芸術って言うのは,高くても「鑑賞したい」という人がいれば成立してしまうもの。今回の夜会,僕が観に行ったのは平日にもかかわらず満席でした。高くても「観たい」って人が多いってことですよね。

僕ですか? 2万円の価値はあったと思いますよ。事実ラストは今回の夜会でも感動のあまり目が潤んでましたから。僕にとっては十分価値のある公演でした。
ただ,一般受けはしないだろうなって思いましたね。理由はやっぱり「理解に時間がかかる」ってことかな。

ちなみにEくんは面白いこと言ってました。前半2000円,後半1万8000円だって。
前半は舞台設定が難解で,彼女の思いが充分に反映されているとは言えず,自分のやりたいようにやってるから,後半は「有機体は過去を食らふ」以後,舞台の転換が早くなり,素晴らしい曲が多いことが理由のようです。


ところで,夜会批判の中で「金返せ」とか言ってる人がいますけど,中島みゆきに限らず,芸術の価値なんて突き詰めれば「自分が好きかキライか」って話。

気に入らないのも批判するのも結構だけど,だったら今後は行かなければ良かろうに。それだって作者に対す類立派な抗議なんだから。それなのに「金返せ」なんて現金なこと言ってると,人として底が浅いことがばれちゃいますよね(笑)


2010-01-01 追記

Eくんに言わせると,ライブや芝居が面白くなければ,その場で席を立って帰るのが一番の
抗議になるそうです。途中退席して『金返せ』なら抗議としては成り立つんではないかな,とのこと。
確かに,劇の途中でどんどんお客さんが帰ってしまうような舞台やライブなら,出演者も真剣に何が悪いか考えるでしょうね。



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2009年12月06日

大江戸りびんぐでっど

前回の投稿から20日ほど空いてしまいました。

11月後半からインフルエンザの流行に伴って仕事も忙しくなり,また研究会やら飲み会やらと夜も出掛けることが多く,まとまった時間をなかなか取れず…

…と言い訳はさておき,早いもので12月も1週間が過ぎようというところ。今年もあと25日しかないんですよね。最近は晴れた日には比較的暖かい日が多いこと,都心近くに引っ越して寒さをこれまでより感じない(東京でも都下と都心では1〜2℃くらい違います)こともあって,なんだかあまり季節感がありません。
空を眺めても東京の冬空特有の「西に富士山がくっきり」っていうのもほとんどありませんしね。
そういえば,雪がなくてスキー場が困っているんだとか。今年も暖冬ですかね。

とは言え師走。
今年も中島みゆきの「夜会」があるし,歌舞伎座さよなら公演も十二月大歌舞伎が始まるし,京都の南座では「顔見世大歌舞伎」をやってるし,と年中行事は確実に晩秋から初冬へ,確実に歩みを進めてます。

忙中閑あり。先日,親父と行った「歌舞伎座さよなら公演 十二月大歌舞伎」のことを記すこととします。


今月の歌舞伎座は勘三郎が出演,夜の部は「野田版 鼠小僧」を,そして昼の部はなんとあの宮藤官九郎(クドカン)が脚本,演出を手掛けた「大江戸りびんぐでっど」を演し物としています。

「クドカンが歌舞伎?」 彼が監督をした映画もちゃんと見たことはなく,漠然と「最近ノってる演出家」という印象しかない。いったいどんな舞台になるのか想像もつかず,あたまの中は期待と「?」が渦巻く有りさま。

「筋書」にもほかの演目と違い出演者のみしか書いてなくて,一切どんな筋なのか分からず。「ゾンビもの」だということが分かった程度。

いざ幕が開く。

出だしはギャグで軽い雰囲気。観客もつられて笑う。その先がどうなるか読めない。

そして芝居の中盤から大きく話が動き出す。あちこちに笑いのエッセンスをちりばめつつ,「品川心中」や「らくだ」など落語ネタも織り交ぜながら,スピーディに進行。

終盤になって気づく。
「おや? 笑いをとって軽く見せてるけど,根底に流れるものはけっこう重いぞ」
なるほど,「りびんぐでっど」とはそういうことか。だから「ゾンビ」なのね。

まだ観ていない方も大勢いらっしゃるので,ネタバレに気をつけながら書こうとすると,こんな書き方しかできません。ただ,最初から幕まで,ずっと舞台に吸い寄せられるように見ていたのは確かです。

おおざっぱにまとめると「現代の雇用情勢と人間模様をゾンビになぞらえつつ,痛烈に皮肉った(?)作品」と言えるのではないでしょうか。こりゃ当代の勘三郎が食いつくわけだ。

あくまで私見ですけどね(^^ゞ

「型」とか「見得」などの歌舞伎的な要素はなく,むしろダンスも多くあって,保守的な歌舞伎層からは「こんなの歌舞伎じゃない」という声も聞こえてきそうです。
でも,役者さんたちがとても生き生きと芝居しているんですよ。ダンスなんて「○団×季」より上手いんじゃないの?と思わせるぐらい。歌舞伎役者さん(とくに立ち回り役の方々)の運動能力の高さや器用さに舌を巻きましたよ。

もともと歌舞伎は大衆芸能。こんなカタチで現代風の新作歌舞伎,僕はあっていいと思います。現に最近人気の「ぢいさんばあさん」や「鰯賣恋曳網」だって新作ですからね。
ヘタに「大河ドラマ」っぽい新作時代物より今回の「大江戸りびんぐでっど」の方が数段おもしろい。再演していくうちに大化けしそうな気もします。


情報がなくてどうしようと思ってた方,ぜひ観てください。

でももう昼の部は満席なのね…「幕見席」を頑張ってとってくださいね。
「一見の価値」は十二分にありますよ。


あ,ちなみにほかの演目「操三番叟」「野崎村」「身替座禅」もいいお芝居でしたよ。
こちらもぜひ楽しんでくださいね。




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posted by うぱっぴ at 23:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 趣味:歌舞伎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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